結局、空腹の香澄ちゃんに朝食を与える羽目になり、時間もそこそこいい時間。
少し早いけれど、俺は学校に向かうことに決めた。
「じゃあ俺、もう行くから香澄ちゃんも外出てくれる?」
半ば押し出しつつ香澄ちゃんと外に出ると、どっか行くの? というので、今日の用事を一通り伝えた。すると、
「じゃ私も行く〜♪」
「・・・・・・え?」
よく聞こえなかったが確かに聞こえた。今、私も行く、って言わなかったか?
もう一度確認すると、どうやら聞き間違いではないらしい。
再三の説得も通じず、俺たちはそのまま学校へ向かった。
「よう龍宮、えらい早いやないか」
「おはようございます龍宮さん」
生徒会室に到着した時には、すでに西宮さんと村中先輩がいた。
まだ八時半だというのに、だ。
「あ、おはようございます。早いですね」
「どうも〜遊びに来ました〜♪」
後ろからハイテンションで飛び出す香澄ちゃんとも挨拶を交わし、そこで俺は南がいないことに気が付いた。
西宮さんに訊くと北条姉妹の支度に付き合ってるとの事。
顔を見なくていいと思っただけで気が楽になる。と思ったら、
「おはようございます、って貴様っ!」
「みんなおはよう。あら、蒼葉さんも来たの?」
南が綾香さんと共に現れた。
香澄ちゃんは、香澄でいいよ〜、なんて言いながら生徒会に馴染んできてる。
そうこうしているうちにが鳴り、ほな始めよか、という村中先輩の号令の下、皆各自の作業に取りかか九時を告げるチャイムり始めた。
そういえば歩美先輩の姿が見えないな〜と思ったら、村中先輩曰く、「歩美が最初から最後までいることなんてまず有り得へん」だそうだ。
俺はと言うと、横断幕用に発注しておいた布を受け取るために綾香さんと一緒に街に出てきていた。
あまり街に来る機会がなかったので、物珍しそうにキョロキョロとしていたら、
「きゃっ!」「うわっ!」
人とぶつかってしまった。
ぶつかったのはスラッと背の高い男性だったが、俺の顔を見るなり、顔を真っ赤にして、すみませんでしたっ! と言いながら脱兎のごとく去っていってしまった。
その行動があまりにも速すぎて謝る事ができなかった。しかし俺はなんつー声を。
「絵里菜くん『きゃっ!』だって。かーわいっ♪」
「か、からかわないでくださいよっ!」
わかったわかった、と言いつつも綾香さんはしばらくの間ニヤニヤとして俺の顔を見ていた。
これからは周囲に気を配ろうと心に決めた、今決めた。