期末テストが終わると、蒼葉高校はテスト休みに入る。
今学期の残りの登校日は、月半ばの芸術鑑賞会と海の日前の終業式だけだ。
綾香さんによると、生徒会はこの時期も学期明けに行われる体育祭・文化祭の打ち合わせの為に登校するのだそうだ。
といっても殆ど内容は固まっていて、テスト休み中は準備に費やす方針らしい。
「体育祭の準備は、主に書類作りから始まるわね。けが人とか病人が出た時の選手変更届とか賞状も作らなきゃいけないし、借り物競争の紙とかも必要ね。文化祭隊長は由貴さん、体育祭隊長は宗一郎くんだから詳しい事はあとで二人に聞いてね」
またしても側近ズは俺の前に立ち塞がるのか。
でも今回は正式な役員なわけだからきっと大丈夫!
「準備ですか? そうですわね、今の所、こちらは手が足りてますわ。南さんの方を手伝ってさし上げて頂けます?」
「準備? はっ、笑わせてくれるじゃないか。貴様は足手まといなのだから一人で徳川埋蔵金でも探しているがいい」
ことごとくたらい回しにされる俺。
西宮さんはまだいいとして南は完全に俺を敵視してるな。
それにしても今まで何気なくやってた体育祭とか文化祭とかの準備ってこんなに大変だったんだな〜。
「おい龍宮。手え空いとんのやったら買い出し付きおうてくれんか?」
やることもなくキョロキョロしてたら村中先輩が声をかけてくれたので、一緒に買い出しに行く事にした。
「まだ慣れてへんのに、こき使って悪かったな。いつもはこないに忙しくもないねんけど、今日は歩美がおらんからな」
買い出しの途中、村中先輩から口を開いた。
「まあ、覚悟してましたから。ところで歩美先輩がいないってどういうことですか?」
もしかして風邪とか、インフルエンザとかだったら大変だ。
そんな心配が顔に出てたらしい。
「そんな心配そうな顔しなや。別に体悪うて休んどるわけと違う。逃げたんや」
「逃げた!?」
「そや。見ての通り忙しいやろ? せやからアイツ逃げてん。いつもの事や」
村中先輩は呆れたような疲れたような顔をしていた。
そうか。村中先輩のポストは海斗先輩と同じポストなんだ。
「歩美はほっとくと何処までも突っ走っていってまうさかい、誰かが止めなアカン。そら、わいの役目やねん」
村中先輩も海斗先輩同様、相手を理解しているからこそ、今のポストが務まっているのだと感じた。
「さあ、早よ五色のペンキ五リットルずつとガムテープ、マスキングテープに皆の労いの為の飲みもん二リットルペットボトル三本買って帰るで」
「・・・・・・え? それを二人で買って帰るんですか?」
「せや。あと、もう歩美も戻ってきとるやろうからあんみつも買ってってやらなな」
絶対二人じゃ無理だと思った。