球技大会は一ヶ月後。

それまで体育は球技大会の練習ということになる。

「それじゃあ、あとは球技大会の練習しててね〜」

『は〜い』

練習という名目で亜沙子先生が休んでる、もといサボってるような気がする。

「そんなことないから、さっさと練習する!」

「姉妹揃って、人の心の中に土足で入り込まないで下さい!」

はぁ、全くどうなってるんだ、町田姉妹は。

「龍宮くん、練習するわよ〜」

「あ、は〜い。今行きま〜す」

北条さんに呼ばれて、俺はグラウンドの端にあるバスケットゴールへ急いだ。

「さぁ、練習始めましょうか。まずはみんなの実力を知らなきゃいけないから、フリースローでもやりましょうか? じゃあ、まず龍宮くんから」

「へ? 俺から?」

「いいから早く」

なんか恐い。ちょっと怒ってる?

「怒ってないから早く!」

あ、俺にプライバシーの権利はないんだ。個人情報保護法が施行されて、早一年、それでも俺の個人情報は、世間に流れて・・・・・・、

「龍宮く〜ん、やる気あるのかな〜?」

やばっ! 北条さんキレ気味だ。早くしないと。

そう思った俺は、バスケットボールを持ってフリースローラインの手前に立った。

バスケットを見て、距離を推算して、集中――そこだ!

俺の手を離れたボールは吸い込まれるようにバスケットの中へ――。

「ナイスシュート!」

「ども」

まぁ、フリースローだし、周りに邪魔する人がいなきゃ入るかな。

その後、全員で一球ずつ投げた。

結果は、言うまでもない。

「入らなかったのは、栞とマイちゃんか・・・・・・まぁ、当然の結果かな」

想定の範囲内だったんだ。まぁ、無理もないけど。

それから、二人はずっと練習していたけど、一向に入る気配がない。

というか、届いてすらいない。

「二人は戦力外・・・・・・と」

「え? 北条さん、何メモってんの?」

「ん? 今後の参考に。あと、私のことは下の名前で呼んで。お姉ちゃんと被るから」

「あ、うん分かった。じゃあ、綾香さん、でいいのかな?」

「なんか、堅苦しいけど、まぁいいわ。私も下の名前で呼ぶね。絵里菜くん? それとも、『ちゃん』の方がいいのかしら?」

「いや、出来れば『くん』でお願いします」

遊ばれてるな〜、俺。

あれ? お姉ちゃん? で苗字が北条、ってことは・・・・・・。

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