俺たちは集合時間までのんびり散歩する事になった。

熱海と言えば、温泉を求めて多くの人がやって来る日本の有名な観光地だ。

その景観は、海岸まで迫る山々にホテルが立ち並ぶ海岸線や、ヨットが浮かんでいる海辺、空には、鳥がとても気持ち良さそうに飛んでいる・・・・・・。これなら熱海が「東洋のモナコ」とも呼ばれてるのも納得できる。

そんな町を今、俺たちは歩いている。

「そういえばさ、みんな吹奏楽で何の楽器やるか決めた?」

俺はずっと気になってた事を訊いてみることにした。

「そうだな〜、ピアノも出来るんだけど、トランペットがやりたいな。カッコいいし」

竜馬ってピアノ弾けるんだ。

竜馬がピアノ弾いてる姿を想像してみた。

なんかカッコいいな。

「俺は打楽器かな〜。笛ってなんか難しそうじゃん?」

辰哉は打楽器か。シンバルとかかな。

っていうか笛が難しそう、ってじゃあ何で吹奏楽部入ったんだよ。

「マイは前から吹奏楽部でしょ? 何やってんの?」

「え? 私? 私はフルート。音色がとても綺麗なの」

へ〜、マイはフルートか。なんかマイらしいな。

みんな結構色々考えてるんだな〜。

「エリは何をやるつもりなんだ?」

「そうだな〜。俺、楽器ってヴァイオリンしか出来ないしな〜」

「え!? 絵里菜くんって、ヴァイオリン出来るの!?」

「うん。小さい時、母さんに教わったんだ。子供にヴァイオリン教えたかったんだって。母さん、ヴァイオリン大好きだったから・・・・・・」

母さんのヴァイオリンは今も持っている。借金のカタに取られないように、父さんが必死で守ってくれたみたいだ。

ヴァイオリンは、唯一残った母さんの形見だから、大事に保管してある。

「じゃあ、ヴァイオリン、やればいいんじゃない?」

「え? だってウチ、吹奏楽部だし・・・・・・」

「明日香先輩が『やりたい楽器があるなら何でもいいよ♪』って言ってた」

何でもって・・・・・・。吹奏楽にヴァイオリン入れたら、管弦楽じゃん。

「私、絵里菜くんのヴァイオリン、聴いてみたいな〜」

「俺も聴いてみたいな。ヴァイオリン、持ってるんだろ?」

「持ってるけど・・・・・・」

何? 何その期待するような目は。

「弾いて欲しいな〜」

なっ! マイまで上目遣いを会得してる!

俺、それ弱いんだよ〜。

「わ、分かったよ。今度ね」

「やった♪ 絶対だからね!」

こうして、いつかヴァイオリンを披露する羽目になった。

忘れてくれないかな〜。

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