「――であるからして、そもそも学生というものは・・・・・・」
 テスト休みも終わり、今日の終業式をもって正式に夏季休業期間――夏休みへと突入する。
 今は校長の代わりに壇上に上がった教頭の長々しい小話が続いているところだ。
 かれこれ二十分は喋ったのではないだろうか。
 ちゃっかりペットボトルまで持参して、口をうるわせているあたりが抜け目ない、
 これはもう少し長引きそうだと感じずにはいられない。
「よくもまああんな縦横無尽に話題を展開できるものだね」
 いい加減睡魔に負けそうになっているところに、竜馬が助け舟を出してくれた。
 もっとも、当人も似たり寄ったりの状況だったのだろうけど。
「まったくだね。そのくせ総じてつまらないときたからもう大変」
 竜馬は、ははは、と乾いた笑いを返してから大きなあくびをひとつ。
「っと、失礼。お、終わったみたいだぞ」
 言われて前を向き直ると、教頭が肩を揉みながら下がっていくのが見えた。
 体育館内の空気まで安堵で満ち溢れているように思えたのは、おそらく気のせいではないだろう。
『続きまして、生徒会長の言葉を、生徒会長、北条歩美さん、お願いします』
 はい、と短くかつ凛々しく返事をした歩美先輩が壇上へと進む。
 館内は再び緊張感に支配された。
「みなさま、長丁場の式典となりましてさぞお疲れのことでしょう。どうぞ、腰を下ろして楽にしてください」
 歩美先輩の言葉は、棒立ち状態だった生徒たちの息を抜くのには十分だった。
 みな、ため息とともに床に座る。
「今年も例年通りか、それ以上の猛暑が予想されます。夏季休業中に活動する部活動の生徒は、水分補給に十分気を配り、体調管理をしっかりするよう心がけてください。食事はしっかりと摂ってくださいね。無理なダイエットなどもっての外です」
 生活指導を含んだ会長の言葉は、教頭の話とは違い、決して退屈なものではなかった。
 壇上の少女は、これも会長の腕の見せ所と言わんばかりの自信溢れる表情をしながら話していた。
 こうして、厳かな空気からも開放された終業式は和やかな余韻を残して終了した。

「んじゃ〜、ちゃっちゃと通知表を返して終わろ〜」
 教室に帰り、終業式恒例の一喜一憂の時間は始まった。
 一足先に通知表を受け取った辰哉の落胆振りを見る限り、聞くまでもないだろう。
 タ行の俺らも、そう時間も経たないうちに順番が回ってきた。
「あとで見せ合おうね〜」
 そう言ったマイの表情は、先の歩美先輩に負けず劣らず自信に満ち溢れた表情をしていた。
 思っていたより成績が良かったことは、火を見るより明らかだ。
「それじゃあ皆の衆、また九月に相見えることを楽しみにしておるぞ! 解散っ!」
 途端に時代劇じみた先生の号令をもって、一学期は無事幕を閉じたのであった。

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