舞台袖には、すでに部員が勢ぞろいしていて、みな緊張した面持ちをしていた。
「明日香先輩っ! エリちゃん拉致ってきましたっ!」
「御苦労! じゃあ剥いちゃうわよ♪」
 そういうと明日香先輩と香澄ちゃんは俺の制服を脱がし始めた。
「へぁ!? ちょっ、何やってんですか!? あ、だめ・・・・・・や、やめっ、ふぁ!」
 振り解こうにも、四肢を結城姉妹と辰哉が抑えていて逃げられない。
 い、いつの間に・・・・・・。
「大きな声出しちゃだ〜め♪ あらいい体♪」
「ふぇ!? や、だからっ、にゃっ、はぅっ! パッ、せめて下着はっ、下着は自分で脱ぎますからあああぁぁぁ!!」

「はぅ、もうお嫁にいけない・・・・・・」
「そのときは私がもらってあげるわっ♪」
 精一杯皮肉を込めた冗談も、今の明日香先輩には通じなかった。
 ものの数分で俺は、いつぞやのゴスロリ服を身に纏った姿に変えられていた。
 それもフルセットで着替えという手の込みよう。
 今はアリス先輩が化粧をしている。もちろん俺に。
「あとはここをこうしてっと。はい〜できましたよ〜。とってもかわいいです〜♪」
「あ、ありがとうございます・・・・・・」
 ここまできたらもう抵抗とか無意味。
 アリス先輩の満面の笑みをみてしまったら、怒る気も失せてしまった。
 ちょうどその頃、俺らを紹介するアナウンスが終わった。
 いや、長かったなおい。
「それでは、蒼葉高校吹奏楽部のみなさんが贈る、スペシャルアンサンブルです!」
 客席からたくさんの声援が聞こえる。
 それを聞いて、今までふざけあっていたみんなの顔つきが変わった。
「さあ、行くわよみんな!」
『おう!』
 明日香先輩の合図の下、俺たちは演奏会のフィナーレを飾る舞台へと進んだ。

 あれから三日。
 未だに演奏会の興奮は冷めやらぬようで、あちらこちらでとある噂が立っていた。
「なあ、ウチの吹奏楽部に、神をも魅了する美少女がいるらしいぜ?」
「なんでも彼女の創り出す旋律は悪魔ですら昇天させる力を持ってるとか」
「彼女に見つめられたら、三秒と保たずに失神するって」
『いったいどんな子なんだろうな〜』

「はぅっ!」
「? どうしたの絵里菜くん?」
 頓狂な声を挙げた俺に、綾香さんが心配そうな顔で尋ねてきた。
「い、いえ、別に・・・・・・」
 生徒の間で、蒼葉高校の不思議が、またひとつ増えた。

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