あれだけ食べた物はどこに行くのだろう? そんなことを女性に聞くのは野暮というものなので聞かないが。 あの後、きんつばにすあま、どら焼きと立て続けに食した歩美先輩は、村中先輩に現状を説明されながら事務作業を続けている。 今もわたあめを食べながらというのが少し気になるのだけれど。 わたあめって、お祭りの時以外でどこに売ってるんだろう? 「おお、もうこないな時間か。んなら昼飯にしよか。十三時から再開するで」 村中先輩の言葉で、時刻が昼時だということに気が付いた。 もうこんな時間だったのか。 今日は香澄ちゃんの乱入もあって弁当を作れなかったので、コンビニにおにぎりでも買いに行こうと思い、生徒会室を出ようとすると、香澄ちゃんが眼前に立ちはだかった。 「えと、何かな? 俺、昼ご飯買いに行くんだけど」 昨日の騒動もあり、びくびくしながら聞くと、はいっ、となにやら四角い箱を差し出した。 「お弁当! エリちゃんお昼ないだろうと思って」 「え? でも昨日からずっと――」 ――一緒だったのに、と言おうと思って、ここがまだ生徒会室だということを思い出し、やめた。 ここでそれを言うのは、問題発言甚だしいと感じたからだ。 「えへへ〜。こんなこともあろうかと、お母さんに頼んでおいたんだ〜♪」 満面の笑みで答える香澄ちゃんは、どこか得意げだった。 まさか昨日ウチに来たのも、今日生徒会の仕事があることも、朝ごはんを食べに来ることも計算のうち? 頭によぎった最悪のケースを、首を左右に目一杯振ることでかき消した。 「だから一緒に食べよ?」 せっかく作ってくれたお弁当。 昼代も浮くし、このノーリスクハイリターンの提案に甘えることにした。 「この玉子焼き! お母さんの得意料理なんだよ〜♪ 食べてっ食べてっ!」 絵里菜と香澄がお弁当トークに花を咲かせている頃、村中は周囲を見渡して、なにやら考え事をしていた。 (歩美のスイッチが入れば、もちと楽に事が進むんやけど、現実問題、あいつの腹に甘味もんが入るばっかりでち〜っともスイッチ入らへん。どないしようか) 蒼葉高校生徒会を支える優秀な副官は殊の外悩んでいた。 このままで間に合うのか。 間に合わなかった場合どうするのか。 先の先まで考えて、最悪の事態を回避する。 それが自分の使命だと信じていた。 「源ちゃーん、このモンブランおいしいよ〜。食べる〜?」 「・・・・・・はぁ」 村中副会長の苦労は、まだまだ続くようだった。 ←back index Novel top next→ 良かったら以下のサイトに投票願います♪ |