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そしていよいよこの時がやってきた。 俺らの初めての演奏会。 公の場での初めての演奏。 なのに・・・・・・。 「どーして俺はこんな格好をしなくちゃいけないんですか~!?」 「あら可愛い♪ 似合ってるわよ、エリちゃん♪」 今の状況を簡単に説明すると、俺は明日香先輩に女装させられてしまったのだ。 そこに拒否権など、あるわけもない。 黒を基調としたフリルのついた膝上五センチから十センチくらいのスカート。 頭にはピンクのでっかいリボンが付けられている。 そんなどこぞの薔薇乙女のような格好をした男子高校生が今、音楽の聖地ウィーンで演奏会に挑もうとしている! どこか音楽を侮辱している気がしてならない。 はたしてこれでいいのだろうか。 「これで~いいのだ~♪ これで~いいのだ~♪ てんさ――」 「あ~明日香先輩、それ以上歌わないで下さい」 「――い、え? なんで?」 いや、何でと言われても・・・・・・。 一応あの歌はパパの専売特許というかなんというか・・・・・・。 「とにかくだめなものはだめなんです。分かってください」 「は~い!」 ほんとに分かってるのかなこの人は。 それより、俺はほんとにこの格好で出るのか? 絶対に受付で何か言われると思う。 これじゃただの女装癖のある変態だと思われるのがオチだ。 そんなことを考えながらドキドキしなから通った受付。 そこには現地の人らしき男性がいて俺を見るなり、 「Es ist das sehr schöne Mädchen!」 と言って、無理やり握手をしてきた。 何だ? オーストリアだからドイツ語なんだろうけどちっとも分からん。 しばらく考え込んでいたら、海斗先輩が気まずそうな顔をして近づいてきた。 「もしかして・・・・・・さっきの人の言葉、気にしてる?」 「あ、はい。俺、ドイツ語とか分かんないんで」 「教えてあげてもいいんだけど、知らない方が良いかもよ?」 海斗先輩はそう告げてきた。 海斗先輩ドイツ語分かるんだ、すげ~。けど知らない方が良いって何だ? 一、二分考えた結果、やっぱりこのままでは気になって演奏に集中できないので訊くことにした。 「えっと、さっきの人はね、絵里菜くんを見て、『とても美しい少女だ』って・・・・・・」 「え・・・・・・? 美しい・・・・・・少女? とても?」 少女・・・・・・美しい・・・・・・美少女? 俺が? ひどいショックを受けながらも、演奏会は着々と進んでいく・・・・・・。 ←back index Novel top next→ |