明日香先輩によると演奏会は、現地時間で言うと明日、行われるらしい。
 ふと思ったのだが、学業の方はどうなっているのだろうか。
 あとで、明日香先輩に訊いてみよう。
 そういうわけで俺たちは演奏会に向けて練習をしているのだが、ここは何処だ?
 妙に馬鹿でかい、まるで体育館のような建物。しかし、壁は防音対策をばっちり施されている。それだけではない。スピーカーもしっかり備わっていて、まるで映画館のようなサラウンドが楽しめるような、そんな空間。まるで、音楽を楽しむために作られたような建物だ。
「明日香先輩、ここって・・・・・・」
「ん〜? やはり気になりますかな、絵里菜くん!」
 顎をさすりながら訊ね返してくる明日香先輩。
 さしずめ○ームズにでもなったつもりなのだろうが、あえて突っ込まないで置く。
「まあ、いやに広い場所ですからね。気にもなりますよ」
「ここは音楽荘一号館だ」
 俺の右手に立っていたユエ先輩が教えてくれた。
 そうか音楽荘だったのか・・・・・・ってえっ!? 音楽荘!? ここ部室!? ていうか一号館って何!? もしかしてウチの学校にあるのって二号館なわけ!?
「この一号館はね、初代吹奏楽部が世界制覇した時に、校長が建ててくれたの。因みに学校の近くにあるのが三号館ね」
 あ、どっかに二号館があるんだ・・・・・・。
 何故、みんな平然と練習をしているのだろうか。
 普通気になるだろ。ここ一号館なんだよ? 世界制覇した時だよ? 学校の近くのが三号館なんだよ? 二号館は何処? って思わない? 世界制覇って何って思わない? 俺? 俺が可笑しいの?
「そんなことないよ、絵里菜くん。さ、一緒に練習しよ?」
「あ、ありがとうマイ。どうしてマイがここにいるのかは、アリス先輩もいるからきっとマイもいるだろうという読者の予想もあることだし、この際触れないでおくよ。でも、マイにも心を読まれたのはなんか納得できない!」
 やっぱり俺って○トラレ? それとも単に顔に出やすいだけ?
 俺はだんだん自分が分からなくなってきた。
「そ、そんなことより練習よ、練習!」
 なにか腑に落ちない部分が多々あったが、これ以上突っ込むとマイが可哀想だったので、俺は練習を始めることにした。
 再び始めた時は覚束なかった手も、今ではしっかりと弾けるようになった。
「やっぱりエリちゃんのヴァイオリン素敵♪ あ、そうそう。本番ではエリちゃんにはこれを着てもらうから」
「・・・・・・え? ちょっ、明日香先輩? 冗談ですよね?」
「本気よ、私は」
「ちょ、待ってくださいよ、俺は――」
「問答無用♪」
「――はい・・・・・・」
 最悪だ・・・・・・。


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