演奏会も午前の部が終わり、今は昼休みの休憩時間を過ごしている。 前半戦の演奏はどれも素晴らしいものだった。 と言っても、俺は音楽に関しては素人に近いので技術的なことは分からないが、それでも何か圧倒されるものがあった。 何か分からないことがある度に、海斗先輩に色々と訊いていた。 この演奏会は、別に吹奏楽だけではなく、管弦楽やピアノ独奏、さてはコーラスなど、音楽の祭典のような形をとられていた。 要は演奏形態よりも、音楽そのものを評価されているのだ。 「ところで俺たちの出番っていつなんですか?」 「私たちは最後の取りを任されているんだ。何せ五連覇中のディフェンディングチャンピオンだからな」 俺の話を唯一聞いてきてくれたユエ先輩が、そう答えてくれた。 そっか、最後か。じゃあまだ出番までは時間があるな。 「・・・・・・って最後!?」 「どうしたの、エリちゃん。そんなに驚いて。大丈夫?」 俺が突然大声を張り上げたもんだから、香澄ちゃんが心配そうな顔をして訊いてきてくれた。 「っへ? い、いや、何でもないよ? ははっ、演奏会、楽しみだな〜。早く終わんないかな〜?」 「? 変なエリちゃん」 香澄ちゃんは不思議そうな顔をして去っていった。 俺が驚いたのにはわけがある。いや、わけもなく驚いている人がいるなら見てみたいものだが。 出番が最後ということは、演奏をするのが最後ということで、つまりはそれまでずっと俺はこの格好でいなければいけないということに繋がるのだ。(忘れている人のために説明すると俺は今、明日香先輩の陰謀で、ゴスロリ衣装を着ているのだ!) そうこうしているうちに時間はあっという間に経ち、いよいよ俺たちの出番がやってきた。 今までみんなで練習した曲を、間違えないように演奏していく。 ふざけている時が多かったが、それでもしっかり練習は重ねてきた。 多い時には十時間以上も練習した。俺だけだけど。 ヴァイオリンを使う俺に合わせて、助っ人の皆さんの中にも弦楽器を用いている人がいて、おかげで本格的なオーケストラが形成された。 俺のソロも間違えることなく弾き終え、会場は歓喜の渦に包まれた。 その時俺は、今までに感じたことのない達成感を感じた。 「は〜楽しかったわね〜演奏会!」 「また助っ人が欲しかったら生徒会に相談してね、明日香」 「うん♪ その時はまたよろしく♪」 俺たちは音楽の都ウィーンに別れを告げ、約十二時間かけて成田空港に着いた。 そこからなんやかんやでみんな学校まで帰ってきた。 明日香先輩の手には、光り輝く黄金のトロフィーがしっかりと握られていた。 ←back index Novel top next→ |