この関西弁、それに後ろからくるこの威圧感は・・・・・・。
 俺は恐る恐る後ろを振り返ると、
「おう、龍宮。それに綾香。わいらも三戦三勝や。次の試合、おもろなってきたな」
 そこには、村中先輩がサングラスを掛けて仁王立ちしていた。
 うわ、恐っ! どこぞのヤクザじゃないっすか!
 子供が見たら泣き出しちゃいますよ!
「そ、そうですね・・・・・・。あ、あの、源さん。サングラス外して頂けます? その・・・・・・恐いんで」
 綾香さんが珍しくおどおどとした口調で言った。
「あ? あぁ、これか。そら、すまんかった」
 そう言って村中先輩はサングラスを取った。
 村中先輩の威圧感が二百下がった。
 まぁ、それでも村中先輩の恐さはあまり変わらないんだけども。
「綾香。わいらの試合はいつや?」
「え〜今、十二時ですから、お昼食べた後、二時くらいからですね」
「さよか。やったら、そん時までに心の準備しとけや。しばきのめしたるさかい。ほなな」
 村中先輩は不敵な笑みを浮かべて去っていった。
「というわけなのよ。三の六には源さんがいるの」
「なるほど、よく解りました」
 綾香さんが言ってたのは、このことだったのか。
 あの人に勝たないと決勝トーナメントにいけないのか・・・・・・。
「なんか、一位通過大変そうですね」
「そうね。頑張らなくちゃ。さて、お昼にしましょうか。絵里菜くん、一緒に食べる?」
「あ、はい。お供します」
 決戦まであと二時間。
 俺たちは決戦前の腹ごしらえをすることにした。
 ――所変わって、木陰で昼食――
「はい、ア〜ン」
 玉子焼きを差し出してくる箸。
 箸を持つ主は満面の笑み。
 しかし、その正体は綾香さんではない。
「ほらエリちゃん、早く〜♪」
 明日香先輩だ。
 なんでも、俺の匂いを嗅ぎ取って駆けつけたらしい。
 その嗅覚、豚並み。
「なんか言ったかな〜?」
「言ってませんって。勝手に人の心読んどいて何言ってるんですか」
「それより私の特製玉子焼き食べて〜♪ なんなら口移しで♪」
「ちょっ、やめてくださいって!」
 それから一時間、俺は明日香先輩に追い回されることになった。
 結果、この昼休みは、休むどころか逆に疲れる結果に終わった。


back index Novel top next