「明日香せんぱ〜い、質問で〜す!」
 香澄ちゃんが力いっぱい手を挙げている。
「香澄ちゃん、な〜に?」
「本当に東京レースのペアで行くんですか〜? 私のペアいないんですけど・・・・・・」
 あ、そうか。辰哉いねぇや。ていうか、男女の比率が合ってないし・・・・・・。
「そうね、どうしようかしら?」
 そう言いつつ明日香先輩の目線は海斗先輩の方へ・・・・・・。
「そこで僕にふるのか・・・・・・。じゃあもう一度ペアを作り直したらどうだい?」
「でも、男子が三人しかいないのよねぇ・・・・・・」
 男子が少ないことは最初から分かってたんじゃ・・・・・・。
「もう肝試しなんてやめて、自由行動にしないか?」
「え〜、つまんな〜い」
 俺的には肝試しは無い方がいいなぁ。
 心で明日香先輩に訴えてみる。
「はぁ・・・・・・。仕方ない。肝試しは中止。各自、自由時間とします」
 明日香先輩の顔は、心底残念そうだった。
「あ、そうだ。みんなこの合宿が終わったら、吹奏楽をやる予定だからやりたい楽器を決めておいてね。参考にするから」
 そう言い残し、明日香先輩は行ってしまった。
 その後ろ姿がどことなく淋しげだった。
 ・・・・・・そんなに肝試しがしたかったのか?
 まぁ、たまには静かでいいかな。さてと、部屋に戻ろうかな。――と、
「龍宮、ちょっといいか?」
 ユエ先輩に呼び止められた。
「どうしたんですか?」
「いや、ちょっと相談したい事があってな・・・・・・」
 ユエ先輩が俺に相談? 一体なんだろう?――と、
「こ、こんばんは・・・・・・」
 ユエ先輩の後ろから、腰まである黒髪の可愛らしい女の子が、ひょっこり顔を出した。
「あれ? 君は・・・・・・誰? あ、もしかしてユエ先輩の妹さんですか?」
「あ、はい。ルナと申します。よろしくお願いします! ルナ、って呼んでください」
 うわ〜、礼儀正しい子だな〜。可愛いし。
 なんか吹奏楽部の周りってレベル高いな〜。
「あの、無理矢理お姉ちゃんに連れてきてもらって、ご迷惑じゃなかったですか?」
「ううん、そんなことないよ」
 そう言えばユエ先輩、ルナちゃん連れて来たい、って言ってたもんな。
「それで、だ。これからどうすればいいと思う?」
 詳しく訊くと、明日香先輩と同じ部屋で泊まるのは、色々と危険なんだそうだ。
「明日香には明日言おうと思っている」
 色々話し合った結果、俺たちの二〇四号室に泊まる事になった。


back index Novel top next