「絵里菜くんの背中、あったかいね〜」 俺にはとても心臓に悪いんですけど・・・・・・。 背中にやわらかい物を押し付けられ、終始緊張しながら香澄荘へと辿り着いた。 「着いたよ。お願いだから降りてくれないかなぁ?」 「ん〜、もちょっと」 「頼むから降りてくれ」 「は〜い」 香澄ちゃんは渋々ながらも降りてくれた。 「じゃあまた明日」 そういい残してさっさと家に帰ろうとしていた俺の手は案の定拘束された。 「・・・・・・やっぱり」 香澄ちゃんはコクリと頷いた。――で、結局・・・・・・、 「ここが絵里菜くんの家か〜」 「ってここは香澄ちゃんの家でもあるでしょ?」 「この香澄荘はそれぞれの部屋で形が違うの。この部屋は大当たりだね!」 「他にどんな部屋が?」 「う〜んと、二畳の部屋とか、お風呂の無い部屋とか、ネズミが出る部屋とかかな?」 なんで一つのアパートでそんなに差が有るんだよ。 今、ここに俺しか住んでない理由がなんとなく分かった気がした。 時刻は七時半。 「ねぇねぇおなかすいた〜」 「ここは自分のアパートなんだから、帰ればいいんじゃない?」 「絵里菜くんの料理が食べたいの!」 そんな円(つぶ)らな瞳で見られたら・・・・・・、 「分かったよ、作るよ」 断れないって、フツー。 タタタタッタッタッタ〜ン。 “蒼葉香澄は『円らな瞳』を覚えた” そんな某ゲームのLVアップを思い浮かべてしまった。 「何が食べたい?」 「絵里菜くんが作るなら何でもいいよ〜♪」 それが一番困るんだよな〜。 俺は何を作るか迷いながら冷蔵庫を開けてみた。 卵、玉ねぎ、御飯はたくさんある・・・・・・よし、 「オムライスでいいかな?」 疲れでとても眠かった俺はちゃっちゃと作り上げた。 卵は、小さい頃近所の洋食屋の小父さんに教わった、所謂(いわゆる)プロ直伝って奴だ。 オムライスを出した後、俺は眠気に負けてベッドに倒れこんだ。 「わっ美味し! 絵里菜くんって料理上手なんだね! 卵なんてフワフワ♪」 「そう・・・・・・それは良かっ・・・・・・ZZZ・・・・・・」 俺は転校初日の疲れか、そのまま香澄ちゃんをほったらかしにして寝てしまった。 それがいけなかったんだ・・・・・・。 ←back index Novel top next→ |