「は〜い、席につきなさ〜い。静かに!」 町田先生の一言で教室内がシンと静まり返る。 「今日からこのクラスに新しいクラスメイトが加わります!」 『ワァ〜』 町田先生の一言で教室内が今度は大騒ぎ。 「入っていいよ〜。自己紹介、ヨロシク!」・・・・・・元気だなぁ、町田先生。 町田先生に呼ばれて俺は新天地へと足を踏み入れた。 中で待っていた生徒は興味津々といった表情でこちらを見ていた。 「え〜っと家の事情でこの学校に来ました、龍宮です。この町の事や、学校の事など分からない事も多いので、色々教えてもらえると有り難いです。宜しくお願いします!」 よしっなんとか詰まらずに言えた。 「とりあえず今は出席番号順に座ってもらえる?」 「分かりました」 どうにか自己紹介も終わり、席に着く――筈だったのに。 「下の名前は何て言うんですか〜?」 一人の男子が俺の触れられたくない話題を持ち出してきた。 何ですと? 貴様、訊いてはいけない事を・・・・・・。 「・・・・・・菜です」 「聞こえないんスけど〜」 「・・・・・・絵里菜です」 『可愛い〜』 ほぼ全員の女子が声を揃えてそう言った。 あぁここでもですか、そうですか。俺の嫌な予感は見事に的中した。 「とりあえず、龍宮くんはあそこの席に座ってね〜」 俺は教室の真ん中ら辺の席に座った。と、後ろの席の人が肩を叩いてきた。 振り返ると、眼鏡をかけた知的な印象の男子が声をかけてきた。 「俺、土屋竜馬(つちや りょうま)。同じ『龍』が入ってる同士宜しくな、龍宮」 「あぁ、こちらこそ宜しく、え〜っと・・・・・・」 「呼び方なら何でもいいぞ」 「じゃあ、竜馬で」 「んじゃあ俺は・・・・・・」 因みに、俺の今までのあだ名と言ったらエリ、或いは乙姫(おとひめ)、二者択一。乙姫の由来は、龍宮城の乙姫だ。このあだ名を思いついた人って想像力豊かだよね。 「乙姫・・・・・・じゃ流石に可哀相だから、無難にエリでいいか?」 こうして俺たちは、互いに呼び方を決め合い、友達一人ゲット・・・・・・かな? 「そっか、転校生だったんだね」 呼びかけられたのは、前の席に座っている、背中の中程まである長い黒髪の・・・・・・。 「あっ君はあの時の・・・・・・」 俺の良い予感も的中した。良い住処、高校、先生、友達、そして運命の再会。 どうやら俺はなんだかんだ言って、とても環境に恵まれてるみたいだ。 ・・・・・・名前以外は。 ←back index Novel top next→ |