第二回 「中略GW〜三人で進級祝いをしよう〜」
――中略――
なんだかんだ言ってるうちに一ヶ月経ち、ようやく進級祝いをすることになった。
今更やってどうすると思う人もいるかもしれないが、そこはスルーして頂きたい。
「いい天気だね〜♪ ねぇ! どこ行く?」
「そうだな、とりあえずボーリングでも・・・・・・」
「それじゃあいい天気の意味がないじゃない!」
そんなやりとりをしながら、俺たちは町中を歩いている。
もう見慣れた風景だった。
少し前までは七人で馬鹿やってたが・・・・・・。
「じゃあさ、公園で鬼ごっことかしねぇ?」
いつまでも決まらなそうだったので、俺はそう提案してみた。
「え〜!? そんな子供じゃあるまいしやだよ〜」
「そうか? いい天気なんだから思いっきり走りたいじゃないか。それとも大和は体力に自信がないって言うのか?」
俺が適当に言った案に、リクが乗ってきた。
どうやら、リクには何か考えがあるらしい。
「なっ!? そんなわけないでしょ! 陸部の力、ナメないでよね!」
補足すると、陸部とは陸上部の略で、大和は部長だったりする。
「どうかな? 陸部弱いしな〜」
「そ、そんなことないわよ! 今年こそインターハイ行ってやるんだから! 勝負よリク!」
先程とはうって変わってやる気になった大和。
流石リク。大和の扱いが上手い。
けなされればムキになる。もっというと、挑発に乗りやすい大和の性格を逆手に取ったやり方だ。
「そうと決まれば、何処か広いところに行かなきゃな。さて、何処がいいか・・・・・・」
リクは腕を組みながら考えている。
しかし、鬼ごっこの場所を探しているだけだから、そんなに考える必要はない。
「じゃあさ、S公園はどう? あそこは広いよ〜」
「そうだな。じゃあ、そこにしようか」
こうして、俺たちは鬼ごっこをしに、S公園に向かうことになった。
――ここはS公園――
S公園はウチの高校から少し行った所にある、いやに馬鹿でかい公園だ。
確か東京ドームの三個分はあったんじゃないかな?
なんせ地名にもなるほどだ。
中には寺とかホテルまで建ってるし。
ここまでいうとモデルが何処なのか判るのかな?
「よし、じゃあ鬼を決めようか」
「ちょっと待った!」
「なんだよ、クウ。今更逃げるのか?」
鬼ごっこをする流れを止められたリクは、ご立腹のようだ。
腕を組んで、こちらを睨むようにみている。
しかし、俺にはもう一つ策があるのだ。
「ほんとにここでやるのか? ここ広いぞ、ハンパなく」
なんせ(以下略)
そんなところで、しかもたったの三人で鬼ごっこをするのはかなり無謀だ。
多分、最初に鬼になった人の負けなんじゃないかな。
それだけは絶対に防ぎたい。
すっかり鬼ごっこでリクに勝つつもりでいた大和は、腰に手を当てて、膨れた顔で向かってきた。
「じゃあ、クウは、他に、なにか、いい方法が、あるって言・う・ん・で・す・か!」
言葉一言一言に目いっぱい力を込めて、ズンズン迫ってくる大和。
その形相は、さながら鬼か般若のようだった。
大和なら鬼「ごっこ」じゃなくて、「鬼」が出来るんじゃないかな?
そんなことを思った俺だが、口にしたら恐ろしいことになるので絶対に言わない。
それよりもなにか打開策を見つけないと、鬼ごっこになるか、鬼に襲われるか。
どちらにしても地獄絵図であることに変わりはない。
しかし俺のもう一つの策を、ここで使う。
「じゃあさ、S公園一周レースってのは? それなら、距離があった方が面白いし、陸部の大和にも有利な種目だろ?」
どうだ、俺の名案は。
これなら上手くいけばリクと大和の一騎打ちになって、俺はスターターになって、そんでもって走らずに済む。
俺にとっては絶好の条件なのだ!
自慢じゃないが、基本的に運動において、この二人に勝てる気がしない。
俺もそこそこ出来るつもりだが、この二人はそれ以上なのだ。
「俺は別にいいけど、大和はどうする?」
何故かリクの顔は、負けるはずはないといった自信に満ち溢れた表情をしていた。
何で女子とはいえ、陸部の部長相手にそんな余裕が持てるんだよ・・・・・・。
一方、大和はとてつもなく悩んでいた。
「え〜、どうしようかな〜。それでも別にいいんだけど、これで負けると陸部の威厳が損なわれるような・・・・・・」
などとブツブツ言っている。
別にいいじゃないか、遊びなんだし。
第一、男と女じゃポテンシャルに違いがあるだろう、と俺は思うのだが、そんなことは関係ないのが部長というポストなのだろうか?
俺は良くわからん。
しかし、大和は変なところでプライドが高い。
更に重度の負けず嫌いだ。
「う〜ん、どうしようかな〜。う〜ん、ブツブツ・・・・・・」
つーか早く決めろよ大和〜。