「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ。どうして俺が生徒会役員にならなくちゃいけないんですか? お断りします」

そもそも俺はここに来てまだ二ヵ月しか経っていない。

正直、この学校の事をほとんど理解していない。

俺の言葉に、歩美先輩の左隣に立っていた秘書らしき容姿の女子が反応した。

「その意見にはワタクシも同意です。何故、彼を生徒会に? それに六人の推薦には二人足りません。よってその方法は成立いたしませんわ」

「あらそうだったの? てっきりあなた方も賛成してくれてるのだと思ってたのに」

歩美先輩の言葉に、秘書風の人とは反対側に立っていた執事風の男子が答えた。

「いえ、私も反対です。歩美様に近づく野郎は、私がこの手で粉砕いたします」

執事風の容姿に似合わずデンジャラスな事を口にしている。

彼が俺を見るその目は、やたら血走った目をしていた。

そこからは、俺に対する殺気のようなものがビリビリと伝わってきた。

心なしか拳が震えている。どうやら今すぐにでも粉砕したいらしい。

たとえ生徒会に入らずとも、俺は彼に目を付けられてしまったようだ。

「そっか・・・・・・。あなたもなのね・・・・・・」

歩美先輩はがっくりと肩を落とした。

やれやれ、やっと諦めてくれたか。

「じゃあしょうがない。一つ目のに切り替えよう! 会長を含む三人だから、私と、綾香と源ちゃんでいっか♪」

歩美先輩は諦めたわけではなく、単に手段を変えただけだった。

彼女は是が非でも俺を役員にしたいみたいだ。

「えええええ! 何言っちゃってんですか? というか俺の意見は無視ですか!?」

「無視です!」

即答だった。

気付くと歩美先輩は、なにやらファイルを開いて楽しそうに何かを選んでいた。

「どれにしよっかな〜。これなんかいいかな〜♪」

状況を考えると、俺の受ける役員試験の内容を決めているようだった。

「会長、お待ちください! 彼が拒絶の意志を示している以上、これ以上の無理強いは極力避けた方が宜しいのでは?」

「そうです! このような輩、私が叩き潰してみせます。歩美様は私がお守りいたします故、どうかお考えを改めてください!」

会長の暴挙を止めるべく必死に説得する秘書Aと執事B。

おいおい執事B。どうしても俺をデストロイしたいみたいだな。

彼らは逆に、是が非でも俺を役員にはしたくないようだ。

「何? 私の選んだ絵里菜くんに文句でもあるの? それに彼の推薦者は綾香よ?」

そう言った歩美先輩の目は、先の執事Bのそれを遥かに上回る殺気を放っていた。

「綾香さんが・・・・・・ですか? 彼を・・・・・・。ですが・・・・・・」

「あ、綾香様が・・・・・・。いや、しかし・・・・・・」

秘書Aと執事Bは歩美先輩のその言葉を聞き、ひどくうろたえていた。

「でもまあいいわ。そこまで言うなら、あなたたち自身がなんとかするのね」

そう言うと歩美先輩は口の先を少しつり上げて、笑った。

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