「ん・・・・・・」
何時の間にか眠ってしまっていたようだ。
ここは何処だろうと周りを見回そうと思ったのだが、どうせ知らない場所だろうから意味無いか。ってあれ? 何か両肩が重い。
両肩を見てみると右は香澄ちゃん、左はマイが俺に寄り掛かって寝ていた。
(何か最近こんなのばっかだな)
今回は然程(さほど)迷惑ではないので、別にこのままでもいいだろうと思いながら再び寝ようと思ったら、
ガタンッ!
突然バスが大きく揺れた。その拍子に、
「あっ!! ちょっ!!」
マイが俺の足に・・・・・・。所謂膝枕みたいな格好になってしまい、更には、
「う〜ん」
マイの横に居たアリス先輩までこっちに来てしまった。
右には香澄ちゃん、膝にはマイ、左にはアリス先輩が俺に寄り掛かる格好に。
「どうしよう」
といってもどうしようもない。
周りを見回してもみんな眠っているようだし。
・・・・・・もういいや、寝よ。
逃げ場の無くなった俺は夢の世界に逃げる事にした。
「・・・・・・きて。お・・・・・・て」
ん? 何だろう、何か聞こえる。
「絵里菜・・・・・・きて、・・・・・・いたよ」
誰かが俺を呼んでる。
「もう! 絵里菜くん、早く起きて。着いたよ!」
「ふぇ?」
「な〜にとぼけた声出してるのよ。着いたわよ、エリちゃん」
マイと明日香先輩に起こされて目を開けると、日の光が眩しい。
バスを降りてみると、その日の光の中にそれはあった。
木造の二階建てで、見た目古い感じ、でも決して悪くない古さ。それはつまり、伝統を感じさせる古さだ。俺はこういう雰囲気は好きだ。
周りは森に囲まれていて、とても涼しい。
ここからは海も見えるみたいだ。
「今日からここに泊まりま〜す。部屋割りはこれね。あ、変更は無しだから、あしからず♪」
そういって明日香先輩は一人一人になにやら紙を渡していった。
多分、そこには部屋割りが書いてあるんだろう。
その紙は俺のところにも回ってきた。
「こ、これって!?」
流石は我が蒼葉高校吹奏楽部。ただの合宿では済まなそうだ。
そこに書かれた部屋割りは恐るべきものだった。