――パスッ。
 ボールがバスケットに吸い込まれていく。
 それと同時に大きな歓声が沸き起こる
 敗者復活リーグとは思えないほどの熱気溢れる体育館。
 ピピー!
 ――とここで、前半終了を告げるホイッスルが鳴り響く。
「みんなお疲れ様。後半も頑張りましょう!」
「「「「「オー!」」」」」
 綾香さんの一言で気合を入れ直す。
 ここまでのスコアは五十九対三十二。
 俺たちの・・・・・・二十七点のビハインドだ。
 こうなったのにも訳がある。
 そう、綾香さんの、「二年七組は要注意」という言葉が、事の全てを物語っていた。


 事の始まりは試合開始直後。
 先制したのは二年七組。
 決めたのは・・・・・・綾瀬くんだ。
 目にも留まらぬ速さですり抜けていった綾瀬くんと日向くん。
 その速攻を、誰も止めることは出来なかった。
「・・・・・・え?」
 いや、速っ!
 普段の綾瀬くんからは想像の付かない動きだ。
「だから言ったでしょ。バスケにおいて、いや、どんなスポーツにおいても、ハルくんと彼方くんのコンビは最強なのよ」
 マ、マジですか?
 その後も綾瀬・日向コンビの猛攻は続き、現在に至るのだ。


「これ以上は取らせない! ってうわっ!」
 グキッ、バターン!
 綾瀬くんのあまりの速さに、俺は思わず転倒してしまった。
「痛てててて。くそ〜、速すぎるよ、あの動き。よいしょっと!?」
 痛い・・・・・・。右足首が、凄く。
 あれ? もしかして、今コケたときにひねった?
「ピピー! 試合終了! 只今の試合、九十二対六十九で二年七組の勝ち!」
 後半も二人の猛攻を止めることは出来ず、俺たちは負けてしまった。
「負けちゃったけど、次の試合に勝てば、二位通過で決勝トーナメントに出られるわ。って絵里菜くん、どうしたの?」
「あの〜、実はですね、今の試合で足ひねっちゃったみたいなんですけど」
「大変! 絵里菜くん、すぐ保健室に運んであげるわ」
 綾香さんはそう言うや否や、俺を保健室まで運んでくれた。
 次の試合、俺は捻挫のため出場できずに、僅差で負けてしまい、俺たちの球技大会は終わりを告げた。


back index Novel top next