「た、ただいま〜」
 迷ったよ〜。途中で暗くなっちゃったから、余計に分かんなくなったよ〜。
「あら、エリちゃん。遅かったのね」
「ええ、迷ってしまったもので・・・・・・」
「エリちゃん、一往復半もしてまた迷ったの?」
 いや、そんなこと言われても・・・・・・。
「方向音痴だって言ったじゃないですか」
「そう言えばそうだったわね、疲れたでしょう。少し部屋で休んできたら?」
「はい、そうします・・・・・・」
 二時間も山道歩き回って足が棒みたいだ。
 夕食まで少し休もうかな、そう思った俺が甘かった。
 俺が泊まる部屋は、ゆっくり休めるような部屋ではないのだ。
 ――二〇四号室――
「あっ、絵里菜くん! お帰り〜」
「「「お帰りなさ〜い」」」
 部屋に帰ると、二〇四号室のルームメイトの皆様が、とても楽しそうにはしゃいでいた。が・・・・・・五月蝿い。これじゃあゆっくり休めないじゃないか。
「ねぇねぇ絵里菜くん、あのね・・・・・・」
「「絵里菜先輩、えっとですね〜・・・・・・」」
 今日はやたらと話し掛けてくるな、結城姉妹と香澄ちゃん。
 俺は、たまらず部屋を出た。
 後ろ目で見たら、三人は物凄く不満そうな顔をしてた。
 なんか可哀相に思えてきたから、後でちゃんと話聞いてあげよう。

 ――休む場所を探して三十分。
 俺は廊下を彷徨っていた。
 これからどうしようかな・・・・・・。――とその時、
「あれ〜、どうしたんですか〜」
 このゆったりとした口調は・・・・・・。
 後ろを振り返るとそこには、
「やっぱりアリス先輩ですか・・・・・・」
「部屋で休むんじゃなかったんですか〜?」
「いや、そう思ったんですけどなんか俺の部屋騒がしくて・・・・・・」
 多分、今帰っても休めないだろうし・・・・・・。
「じゃあ私達の部屋に来ますか〜?」
「えっ、いいんですか? あ、でも明日香先輩とか居るし・・・・・・」
 あの人が居ると多分、いや絶対に休めない。
「明日香ちゃんは今、部屋に居ないから大丈夫です〜」
 それなら大丈夫か。
「じゃあお願いできますか?」
「はい〜♪」
 俺はアリス先輩の部屋に招かれ、ようやく休む事が出来た。と思ったのに・・・・・・。

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