可愛らしい少女のお陰で香澄荘を見つけた、それから二十分後。 近い様で意外と距離あったんだな。 俺はクタクタで、早く休みたい。 てな訳で苦戦しつつも、なんとか香澄荘に到着。 まずは大家さんの所に挨拶しに行かなきゃな。お? あの人かな? 俺は香澄荘の前に花壇を弄っている女性を見つけたので、声をかけた。 「あの、すみません・・・・・・」 「はい、何でしょう?」 一目見た時に、とても優しい、聖母のような印象を受けた。言い過ぎかな? 「あの〜、もしかしてあなたは香澄荘の大家さんですか?」 「はい、そうですけど。あら、もしかしてあなた、今日ここに越してくる・・・・・・」 「はい、龍宮です。これからお世話になります。ここに来るまでに迷ってしまって」 「あらあらそれじゃあ疲れたでしょう? すぐお部屋に案内しますね」 「あ、はい。ありがとうございます。助かります」 あ〜申し遅れました、俺の名前は龍宮絵里菜(たつみや えりな)、因みにこんな名前でも百%男なので悪しからず。 親がどうしても付けたかったと言う理由で付けられたこの女っぽい名前、それに髪は肩にかかる――簡単に言うと長い。更に加え女顔と言う訳で、小学校の頃から女子より男子に告白される方が多かった。無論、俺にそっち系の趣味は無いから全て払い除けた。 幼い頃から「可愛い」と言われる事が多かった。男としては決して嬉しい事ではない、むしろ悲しむべき事だ。 だから俺は、中学校に入ってから一人称を『僕』から『俺』に替えた。 この事によってイメージが変わったかと言うとそうではない。 だが、再び『俺』から『僕』に戻すのもあれだったのでそのまま過ごして今に至る訳だ。よく「違和感がある」と言われる。 「ここです。何か分からない事があったら遠慮なく仰って下さいね」 「あっはい、ありがとうございます」 部屋は十畳のリビングと、六畳と八畳の部屋の二LDK、家具は揃ってるし生活するには申し分ない部屋で、外見からは想像できないほど中は凄かった。 その後俺は三時間かけて、とりあえず一通りの荷物を整理し、それからかなりのんびりした後、俺はさっき机の上においておいた学校案内書を手にとって見てみた。 「何々、私立蒼葉(あおば)高校、創立五年。結構新しいんだな。生徒数は千二百人くらいだと思う・・・・・・だと思う? 適当だな、おい。・・・・・・まぁいいか。校風は個性を重んじて自由をモットーに頑張る高校です、か。」 ん? 頑張る高校って何だ? 何か訳わかんねぇけど不思議と悪い感じはしない。 少なくとも前の高校より楽しめそうだし、面白そうな高校だな。 「後は部活か、うわっ六十個以上もあるよ。とりあえず疲れるから運動部は却下かな。文化部だけでも三十個くらい有るけどまぁなんとかなるだろ」 そんなこんなで明日から俺の新たな高校生活が始まる訳だ。 「って明日かい! 早過ぎるだろ、幾らなんでも!」 只今の時間――午前二時二十七分。 ←back index Novel top next→ |