青天の霹靂とは、この事を言うのだろう。
明日香先輩の衝撃発言からたった一日後――つまり翌日。
俺たちは基本的には成田空港にいる。
基本的には、というのは、辰哉がいないからだ。
「たつやくんどうしたんだろー?」
香澄ちゃんが心配するように言っているが、イマイチその感情は伝わってこない。
多分、どうでもいいんだろうな、辰哉のことは。
思えば、球技大会の村中先輩と戦う前(♯60)以来、辰哉の登場がない。
もはやサブキャラだ。♯4からいる古株なのに、サブキャラにサプライズ人事だ。
「俺、多分辰哉のことだから、羽田にいると思う」
竜馬よ、その予想は多分当たりだ。おそらく読者の方も予想が出来ただろう。
哀れ辰哉。君が再び現れるのはいつなのだろうか。
「明日香、辰哉くんがいないが、飛行機はいつ出るんだ?」
海斗先輩はあくまで冷静な態度で明日香先輩に訊ねた。
すると明日香先輩は、人差し指を顎に当てながらこう言った。
「ん〜? 十分後に離陸♪」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・は? え!!?
「えっと・・・・・・それはつまり、急がないといけない?」
「そうね〜。と言うわけでみんな! ダッシュよ!」
そういうと明日香先輩は、ものすごいスピードで人ごみの間をすり抜けていった。
俺たちは慌てて追いかけて、なんとか離陸時間に間に合うことが出来た。
しかし、ここまで読んでくれている君には、なんとなく分かるであろう。
この小説が、こんなトラブルのビックチャンスに、たった一、二行で事が丸く収めるわけがないと言うことを・・・・・・。
大人数の乗客を乗せた鉄の鳥が、雲一つない蒼空を翔けている頃、一つの違和感に、俺は気付いた。気付いてしまった。
「あ、あの、あ、明日香先輩? マイがいないんですけど」
「あらそう? そう言えばアリスもいないわね。全くもう、あの子はすぐに迷子になるんだから」
――話は二十分ほど前に遡る。尚、一人称はマイである――
今、私に見えているのはアリス先輩の背中だけ。
他の人は、急いで搭乗口へと走っていってしまった。
ようやく搭乗口に辿り着いた私は見た。
本来、私たちが乗る筈の飛行機が飛び去っていくのを。
私は目の前が真っ暗になった。
お、置いてかれちゃった・・・・・・。私、どうすれば。
途方に暮れる私の前にはアリス先輩の姿。
「あら〜、行っちゃいましたね〜」
その姿は全く動じていない気がする。
そんなことは置いといて、とりあえず、
「「どうしよう・・・・・・」」